XXX.jpg


これは私の友達の友達が体験した話。
その彼は上場企業のサラリーマンで三十歳独身。
私は彼との面識が無く間接的に聞いた体験談だ。



ある日の事。
パソコンの電源を入れると…
見知らぬファイルがデスクトップにあった。

XXX.jpg
XXXは伏字では無い。
そういう名前のファイルだった。

見に覚えの無いファイル。
名前からして何かの画像だろう。
ファイルをクリックして開いてみた。

それは見た事のある写真だった。
前にどこかのサイトで見た写真だ。
砂浜から夕焼けの海を撮影した写真。

それなりに綺麗な写真だが。
撮影者の影が写りこんでしまっている。
あまり出来のいい写真じゃ無い。

この写真がどうしてここにあるのか。
保存した覚えもこんな名前を付けた覚えも無い。
不思議に思ったがそのまま削除した。


次の日。
パソコンの電源を入れると…
捨てたはずのXXX.jpgがまたデスクトップにあった。

開いてみるとやはり同じ写真。
砂浜から夕焼けの海を撮影した写真。
その写真をすぐに削除した。


そして次の日。
またXXX.jpgがデスクトップにある。
砂浜から夕焼けの海を撮影した写真。

ふと奇妙な事に気が付いた。
写真には撮影者の影が写りこんでいる。
つまり太陽は後ろにあるはずだ。

空が赤くなるのは太陽のある方角だ。
後ろに太陽があるはずなのに…
どうして空がこんなに赤いのか…。

気味が悪くなってその写真を削除した。
念の為にゴミ箱の中身も削除した。
もう大丈夫だろうと思った。


しかし次の日。
完全に削除したはずのXXX.jpgがまたデスクトップにある。
砂浜から真っ赤な空の海を撮影した写真。

その写真を見てある事に気が付いた。
右端に子供の手らしきものが写り込んでいる。
今までそんなモノは写っていなかったはずだ…。

その事に気付いた瞬間!
パソコンの電源が落ちた。
背筋に冷たいものを感じる。

電源を入れるのが怖い。
だが仕事で使うのでそうもいかない。
恐る恐る電源を入れた。

デスクトップにはXXX.jpgがある。
「もう絶対に開くものか」と思った途端。
画面いっぱいに写真が表示された。

消そうとするもパソコンが操作を受け付けない。
見たくも無いのにその写真を見てしまった。
無意識に右端の子供の手に目が行ってしまう。

ゾッとした。
さっきは手首までしか写り込んでいなかった子供の手。
だが今は腕の関節辺りまで写り込んでいる。

信じられないが写真の中の子供が動いている。
本当に子供なのか男なのか女なのかどんな人間なのかも分からないが。
それを知ってしまうと何か良くない事が起きると直感した。

電源を長押しして強制終了をした。
二度とそのパソコンの電源を入れまいと誓った。
触るのも嫌で業者に引き取りに来てもらった。


すぐに新しいパソコンを買った。
それからおかしな事は起きていない。
でもネットサーフィンは控えるようになったよと彼は苦笑いをこぼした。



私の友達が彼からその体験談を聞いた年の夏。
彼は海水浴場で溺れて死んだ…。
泳ぎに自信のあった彼が足も着く程の浅瀬で溺れて死んだ…。

ただの事故か写真の呪いか…。
あるいは写真は海に行くなとの警告だったのか。
今となっては全て謎である。



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