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慰霊碑の有り方が気掛かりで仕方が無い。
削られた大きな岩に何か字が書かれていたようだが、色褪せて解読できない。 慰霊碑の周りは手入れされた様子も無く、腐食の進んだ卒塔婆が横に寝かされている。 一見しただけではこれが慰霊碑だという事に気付かない人も多いだろう。 彼女達が何を想い、短刀で自らの首を突き、滝に身を投じたのか… この慰霊碑の有り方を見る限りでは、彼女達の心の内を理解して供養したとはとても考え難い。 この探索記の文頭でも述べたように、彼女達は愛する我が家族の事を想いその道を選んだのである。 恐らく多くの人は彼女達の死を戦で負けた者の末路といった安直な見解をされているのだろう。 今回の探索で私は御主殿跡を越えた辺りから滝に向かうまでの間、終始寒気と悲しみの念を感じていた。 しっかりと供養がされていれば、四百年の歳月を経た現代において、そのような感覚を覚えるだろうか。 古き物を残す事はけして悪い事では無いが、時と場合によりけりだろう。 彼女達の想いを継がずして、この無骨な慰霊碑を継ぐとは何事かと、憤りさえも感じる。 いつの日か、彼女達の念が浄化される日が来る事を願う。 そして彼女達の想いも語り継がれる事を…。 |